「風の谷のナウシカ」推薦 第零話: ナウシカを「読み」たくなる話

※ネタバレ注意

※映画版見てない人はこうなってるところは飛ばしてください。

※基本的に、漫画版について書いてます

 

 

 

1、はじめに

風の谷のナウシカDVD表紙)

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 僕にとって風の谷のナウシカという作品は思い出のあるものです。

 田舎にある祖父母の家に帰省する時、毎回金曜ロードショーから録画した「風の谷のナウシカ」「天空の城 ラピュタ」といった作品を見てました。小さい時は毎年一回見ていたので5回くらい見たと思います。

 

 

 (漫画版「風の谷のナウシカ」全7巻)

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 しかし、ここで今回僕が語っていきたいのは映画ではなく、漫画版のナウシカです。実はみなさんご存知の映画版の「風の谷のナウシカ」は漫画版に換算すると、全7巻のうち2巻くらいにすぎないのです!!!

 

 ストーリー展開も設定の重厚さも全く違うものとなってるので、買って読むことをお勧めします。

 

   では!今回はそのイントロとして適切なように(ストーリーのネタバレにならないように)、漫画版「風の谷のナウシカ」を語りたいと思います。^_^

 

2、世界観

 西暦およそ4000年(注1)

             人類は

                    たそがれの時を迎えていた。

 

(火の七日間)

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1000年前、人類は巨大産業文明を完成させた。しかし人類は、巨神兵による「火の七日間」で大きく後退した。高度に発達した科学技術体系を失い、地上は廃墟と化した。その末裔は、荒廃した世界にひっそりと住んでいる。

 

 

腐海

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産業によって汚染された大地は、巨大化した菌類の巣窟〜腐海〜に飲み込まれている。その腐海は有毒な瘴気を噴き、人を出血による壮絶な死か緩やかな石化へと追い込む。人類はそこでは毒マスクをつけなければ生きることはできない。

 

 

 (王蟲

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異常発達を遂げた腐海には、巨大化した虫(作中では「蟲」と表記する)の天国となっていて、人間に対して攻撃的な生態系が構築されている。

 

 

 (トルメキア軍の艦隊)

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  人類の末裔は腐海のほとりのわずかな国土に生きている。

  人類に遺されたのは巨大産業文明時代に建造されたセラミックの遺産。船の建造技術は失われ、船齢数百年の船が動くのみである。

 

(世界地図)

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  腐海に飲まれてない国土には大国が2つ。腐海のほとりの辺境には小規模な町が。腐海に住む古の一族。腐海の蟲たち。そして、滅びた旧世界の人間の意志。

  風の谷の少女、ナウシカ。その人のもとで物語が駆動を始める。

 

・・・・・・・ 

 

 僕はこういう凝りに凝った、そして、現実とはかけ離れつつもリアリティのある世界観の作品が好きです。。

 

 

 確かに、この世界観からは、人類の自滅というベタなテーマが見えて来ます。

でも、宮崎さんのすごいところが、その巨視的なストーリーを見据えつつ、極めて細かいキャラクターストーリーを構築できるところなのです。

 

 これと比べると、「パッと問題が起きて、主人公がちょっと何がすると世界を救えちゃう」ようなハリウッド映画が陳腐に見えて来ます。

 

 

 

3、国際情勢

 西暦4000年頃、既に地球の大部分が腐海に没したが、寸土を巡って大国が二つ睨みをきかしていた。

 

 

(トルメキア王国第4皇女クシャナ

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   トルメキア王国は、映画版でお馴染みのヨーロッパ風国家で、クシャナの父が王となっている。ちなみに、クシャナ殿下は先王の血を唯一引く正当な王家の一族であり、父や義兄弟から暗殺の機会を伺われている。

 

 実は、先王派のクシャナが「風の谷」や「ペジテ市」に来たのは、

クシャナの指揮する第3軍とクシャナ自身を分断しようという現王派の政治工作だったりする。

 

 

 

 (土鬼(ドルク)の浮砲台)

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 一方、映画未登場のもう一つの土鬼(ドルク)は、超能力をもつ神聖皇帝が統治する怪しげな国。多少、東洋臭いが中国でもなくインドでもない感じ。戦艦も土偶のような設計で、日本の大昔のアニミズムと仏教が混じった感じがする。でも、日本ぽさは全くない。

 

 

 ちなみに、辺境諸国は

(風の谷)

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 風の谷:「常に海から風が吹き込むので、腐海の瘴気が谷に降りてこない」という恵まれた所にできた町。ガンシップという高性能戦闘機を保有し、そのために一目置かれている。トルメキアと古い盟約で結ばれている。

 

 (ペジテ市の王族アスベル)

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 ペジテ市:巨大産業文明時代の遺物が街の下に眠っている。エンジンを作る技術体系は失われたので、地下からエンジンや材料となるセラミックを採掘している工房都市。トルメキアと古い盟約で結ばれていた。しかし、最近、地下で覚醒していない巨神兵を見つけたために、トルメキアに攻撃されて、アスベルが激オコ。

 

 

 映画版では>>>

トルメキアの辺境部隊

 vs

 滅ぼされた辺境の都市ペジテ市

 

漫画版では>>>

トルメキア王国

vs  

土鬼諸侯国

 

 

 

 

 

 

6、おわりに

    映画版からはほとんどわからない世界観や国際情勢に触れました。映画しか見たことのない方は「これってYouTubeとかに出てくるジブリ都市伝説?」と思うかもしれません。しかし、それは違います。このページに書いてある情報は宮崎駿監督自身が執筆した漫画版の記述に従ってます。

 

   逆に、ナウシカ火星説は誤りですね。漫画版冒頭では「ユーラシア大陸の西の〜〜」という記述があるので、地球です。

 

 さらに、「ナウシカ火星説」の根拠となる「砂漠で荒廃した土地」ですが、実は風の谷の近くはエフタル砂漠と呼ばれる砂漠地帯ではありますが、他の地域には砂漠ではないです。外国には畑作が行われている描写もありますので、、、

 

   とりあえず!

 

  お話の基盤となる世界観はお話しました。

 

 

 

 漫画版ではこれを土台に「トルメキア戦役」という戦争が展開します。次はその戦争史を概観します。こちらは完全にネタバレですので、漫画版を読んでからみてください!

 

 

  興味を持った方はぜひ読んで見ください。

 

 

 

注1:各巻表紙裏に書かれている文章を参照。

ユーラシア大陸の西のはずれに発生した産業文明」→18世紀にイギリスで起きた産業革命と見た

「産業文明は数百年のうちに全世界に広まり」→植民地時代とそれからの解放そしてグローバル化を経ている西暦2000年ごろと見られる

「巨大産業文明は1000年後に絶頂期に達し」→西暦3000年ごろ

「急激な衰退」「火の七日間」→西暦3000年ごろ

第1巻26ページ参照

「巨大産業文明の群が時の闇の彼方に去ってより千年」→現在は西暦4000年ごろ

 

投稿、9/5

最終更新、9/9