「風の谷のナウシカ」謎 第弐話:腐海とは?(前編)
※ネタバレ注意。ただし、漫画のラストで明らかになるレベルのネタバレはなし。それは(後編)で! 後編アップするかわからんけどな...
目次
1、はじめに
「風の谷のナウシカ」は端的に言って、腐海と蟲で滅亡しかかった人類の物語。
腐海とは何か?蟲とは何か?
その問いは「風の谷のナウシカ」の主人公ナウシカの関心そのものでもある。物語が進むにつれて真実が明らかになっていくのが、この漫画の醍醐味でもある。
ここでは、漫画のラストでネタバレになるレベルのお話は避けて、数々の問題提起をしようと思う。
2、腐海出現の謎
漫画第1巻26ページによると
『腐海』とは
滅亡した過去の文明に汚染され不毛と化した大地に生まれた新しい生態系の世界をいう
蟲たちのみが生きる有毒の瘴気を発する巨大な菌類の森にいま地表は静かに覆われようとしていた。
意地悪な問いかけとなるが、巨大産業文明が滅亡したのは1000年前、つまり、西暦3000年ごろ(詳しくは、第零話:イントロの注1をご覧ください)である。読者の皆さんがご存知の通り、西暦2000年ごろには腐海や蟲は存在しない。
急激な進化が促されたのかは不明だが、腐海の明らかに生命の通常の進化の速度を超越している。
急激な生態系の変化の原因は何か?
放射能か化学汚染か地球外生命体か。それが「腐海の出現」の謎だ。
3、蟲の人間への集団的攻撃性の謎
「腐海に入って蟲を殺せば蟲の群が人間を殺す。」
これは「風の谷のナウシカ」の読者なら常識だろうが、一方引いて考えてみたい。
通常の森林であなたがイノシシを殺したとしよう。森のハチやヘビやクマが一斉に襲ってくることはありえない。
では、なぜ地蟲を殺せば、羽蟲も王蟲も共同して集団攻撃をするのか?なぜ墜落して蟲を殺したペジテ市のアスベルは、種を超えて集団攻撃を受けたのか?
全生物の天敵と化した社会的生物である人類に対抗するために、人間に対抗する社会的機構としての「自然」が進化の先にあると宮崎監督は言いたいのだろうか?
進化の先には、人間と自然という対立がより強化された世界が待っているのだろうか?
4、「森」への利他的共同体の謎
3で人間に対抗するため、地蟲や羽蟲や王蟲といった種を超えた集団攻撃という社会行動を身につけたと指摘した。
しかし、事態はそれに留まらない。
(以下、少しストーリーのネタバレとなる)
トルメキア戦役の大海嘯において、引き金となったのは人工粘菌による人工腐海が誕生したからである。
その人工腐海を通常の腐海と同化させるために、蟲の大群が自分の命を捨ててまで大移動を開始した。
作中では
王蟲「コノ森ハ、モハヤ我ラヲ必要トシテイナイ。南ノ森(注、人工粘菌による人工腐海)ガ呼ンデイル」
と述べていて、腐海の維持のために身命を賭す蟲の姿が描かれている。
また、
王蟲「我ワレハ、個ニシテ全、全ニシテ個」
とも述べられていて、腐海の蟲が一つの精神的何かを共有し、それらが個体に反映されていると考えられる。
この環境維持のための利他的行動がどのように生まれたのかは非常に気になるところだ。
5、ナウシカ・森の人・蟲使いの謎
以上でのべた「森」と友好関係を結ぶ人間もいる。ナウシカ・森の人・蟲使いである。
彼らは人間であるのにも関わらず、蟲から攻撃されない。特にナウシカに関しては、王蟲と意志疎通をでき(王蟲が心を開くという)、王蟲との友好関係を結んでいる。
なぜ彼は人間であるのに腐海の敵として認識されないのか?それが謎である。
6、終わりに
今の僕の思い込みが真実に近いなら、上でのべた謎は全て重要な指摘であり、漫画のなかから答えを出せると思う。しかし、その答えは重大なネタバレとなってしまう。
だから、これを前編とした。後編ではネタバレ必至だから、もう少し経ってから書きたいと思う。(書かない未完の話にしても良いが...)
みなさんが漫画を読む際は上の疑問を抱きながら読むとより楽しめるかもしれない。。
「風の谷のナウシカ」解説シリーズ
第零話: ナウシカを読みたくなる話
https://kuncho.hatenablog.com/entry/2018/09/05/224710
第壱話: トルメキア戦役の展開
https://kuncho.hatenablog.com/entry/2018/09/09/150910
第弐話: 腐海と蟲(前編)←イマココ